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製品レビュー



古見 きゅう KYU FURUMI

古見写真事務所 主宰。東京都練馬区出身。
本州最南端の町 和歌山県串本町にてダイビングガイドとして活躍した後、写真家として独立。 現在は東京を拠点とし世界中の海をフィールドに、各地の自然や文化などを精力的に撮影し、月刊ダイバーなどダイビング専門誌をはじめ、様々な媒体に作品を発表する。著書に「南紀串本海の生き物ウォッチングガイド」(共著)がある。


MDX-7D(Canon EOS 7D用ハウジング)のレビュー

MDX-7D(Canon EOS 7D用ハウジング)を使用して

1.焦点距離が1.6倍に

僕はデジタルカメラを導入してからというもの、DX-5D、MDX-40D、MDX-PRO 5D MarkIIとシーアンドシーの開発とともに歩くように、これらのハウジングを使い続けている。MDX-PRO 5D MarkIIを手に入れた時から、自分の理想に限りなく近いものを手に入れることができたと満足していたが、カメラ本体の機能や操作性も日々進歩している中で、 今回のEOS7Dの機能も大変気になっていた。
僕は主にこのMDX-7Dには、EF100mmやSIGMA製の50mmなどのマクロレンズを装着して使うことが多い。というか、ほぼ完全にマクロ撮影で使用することを考えている。
大きな理由のひとつとしては、まずカメラの構造上、装着するレンズの焦点距離が1.6倍になるということ。例えば100mmを使う場合は160mm相当の焦点距離になるということだ。
これをメリットととるかデメリットと受け取るかはユーザーによって大きく変わってくるところだと思うのだが、僕は小さな生き物たちが見せる、「海の中でのコミュニケーション」 というものに非常に興味があって、まず「何かと何か」が一緒にいるようなシチュエーションを探す。大きさ数センチの小さな生き物たちは、たとえ単体であっても僕たちが考えるよりもずっとシャイで、静かに丁寧にアプローチをしないとすぐに逃げられてしまう。コミュニケーションを撮るには、当然のことながら複数匹でいるところを撮らねばならず、 余計に神経を使わなかければならない。そんな時にこの160mm相当というワーキングディスタンスが非常に有効となる。彼らにストレスを与えないためには、できれば離れて撮影したほうがよい。100mmに比べて、160mm相当であればより少しでも離れたところから被写体を大きく撮ることができ、彼らの自然な振る舞いを垣間みることができる。現在の僕にとってはベストな距離感とも言える。ではこれが『200mmくらいあったほうがより離れることが出来ていいのでは?」と思われる方もいるかもしれないが、これ以上被写体と離れてしまうと、手持ちのストロボ(YS-110α)より強力な光量のストロボがなってくることが考えられるので、現時点ではこの距離感がベストと感じる。




2.新機能オートライティングオプティマイザ
EOS7Dには新しい機能となる「オートライティングオプティマイザ」という機能が搭載されている。これも7Dで興味をそそられた機能である。
取り扱い説明書によると「撮影結果が暗い場合や、コントラストが低い場合に、明るさ・コントラストを補正することが出来ます」とある。すなわちカメラが自動的に、良かれと思う明るさに導きだしてくれる。というなんとも夢のような機能のようだ。この機能には、強め、標準、弱め、OFFと4段階の選択肢がある。この威力を最大限に試してみようと、まずは強めから試してみることにした。
僕はどちらかというと常にハイキー(明るめ)気味の写真を好んで撮ることが多い。もう癖のようなものなので、これをオートライティングオプティマイザがどう補正するのか、 とても興味があった。撮影した結果、いつも自分がイメージして撮っている露出から、更に明るくなるような印象を受ける。何度も試してみたのだが、なかなか思うようなイメージが反映されないものなのだと感じてしまった。考えてみたらそれも当然のことで、これまで露出もストロボの光量も全てマニュアルで、写真の陰影も自身で考えながら撮ってきた人間が、カメラに内蔵されるオートの補正機能を使って最良の結果をいきなり求めるというのも、なんとも虫のいい話である。徐々に、標準、弱め、と効果を弱めていくと当然のことながら、いつものイメージに近づいていった。
では、逆説的に考えてみると、まだ水中撮影に不慣れなビギナーのダイバーや、まずはキレイな写真を撮って、これから勉強していきたいと思うダイバーにとっては非常に有効な機能とも 言えるかもしれない。水中写真を撮るダイバーに「どんな失敗が多いのか?」と話しを聞くと、「写真が暗くなってしまう」という類いの回答も少なくはない。こういったダイバーには、 まずオートライティングオプティマイザを使用し、ある程度水中写真に慣れて、自分の写真スタイルが見えてきたら、徐々に効果を強めてみたり、弱めてみたり、またはOFFにしてみたりと 様々な選択をすることが出来る。この機能があれば、カメラと一緒に成長していくことが出来る。長く付き合うことが出来る相棒として撮影を楽しんでもらいたい。
僕もこれからさき、新たな表現を求めて、この機能を十二分に生かすことが出来るような撮影方法を構築していきたいと思う。

3.高感度撮影
7Dは高感度撮影にも強い。普段はこれまでの経験や、いろんなバランスからISO200で撮影することが多いのだが、早いシャッターを切りたいとき、絞りをもっと絞りたいときなど、 状況によっては640や800という感度も使用する。かなり大伸ばしのプリントなどにしたら、違いは出てくるのかもしれないが、通常雑誌などに掲載されるほどの大きさでは、ほとんど違いはわからない。なので今では、例えばサンセットの薄暗い中での貴重な生態シーンの撮影などでは、必要とあれば躊躇いなく感度を上げるようにしている。常用で6400まで上げることは可能なので、様々なシチュエーションに対応することが可能になる。




4.ハウジングの操作性
最初にハウジングを手にした時のフィーリングというか、手に収めてみた時の感覚を僕はとても大切にしている。MDX-7Dはカメラ本体の内蔵ストロボをポップアップできるように、デザインされているため、これまで僕が使ってきたハウジングよりは、少しハウジングトップ部分が突き出ている印象を受けたのだが、実際手に取ってみるとカタログ上で見るよりも、はるかにコンパクトな作りだった。一本のダイビングで複数のハウジングを持ち込むこともあるので、やはりコンパクトなハウジングは嬉しい。ハウジング背面のそれぞれのボタン類の距離も近く、操作性はMDX-PRO 5D MarkIIから更に使いやすくなったとも言える。ほぼ右手だけで主要な撮影機能を操作できるというのは、何にも代え難いメリットであると言える。そしてハウジングの剛性も上積みされている印象を受けるのがまた心強い。まず手に持った感触は前述の通りコンパクトなのであるが、それだけではなくこれまでのモデルよりもガッシリとした安心感がある。カタログ上では耐圧水深も60mと、大深度にも十分に対応できる。
新しく開発された45°ビューファインダー「VF45 1.2x」との組み合わせも非常に楽しみだ。
これから先もハードな撮影はまだまだ続くが、新しく加わった相棒のMDX-7Dと共に、世界の海で素晴らしい瞬間を切り撮っていきたい。





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