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製品レビュー



中村卓哉 TAKUYA NAKAMURA

1975年東京都生まれ。10歳の頃沖縄のケラマ諸島でダイビングと出会い神秘的な海中世界の虜となる。日本大学芸術学部写真学科で撮影の技術を学び父親で水中写真家である中村征夫氏に弟子入り。4年間撮影アシスタントを勤める傍ら自らも新聞、雑誌等の撮影をする。その後ダイビングのインストラクターとして水中撮影の技術を伝えながら作品を撮り続け、活躍の場をひろげるため沖縄本島に移住。現在はTV、ラジオ等などで沖縄の海の素晴らしさ環境問題を伝える活動も行いながらフリーの水中カメラマンとしてマルチに活躍。現在東京にて活動中。


VF45 1.2xのレビュー

日の出前の西伊豆大瀬崎。
VF45 1.2x(45°ビューファインダー)を装着したMDX-D300を片手にぶら下げて外海(柵下)へ。
VF45 1.2xで対峙する初めての被写体に選んだのは朝焼けに染まる富士山である。 ほぼ標準画角の35mmレンズを装着、日の出と共に暗闇にうっすらと浮かび上がってくる富士の輪郭を頼りにビューファインダーを覗きこむ。


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暗闇に浮かぶ富士の輪郭
(レンズはNIKKOR 35mm f1.8)



まるでスコープを覗き被写体をロックオンするかのようにドキドキが押し寄せる。VF45 1.2xを覗いたファーストインプレッションはこんな感じである。刻々と色彩を変える富士のオーラが手に取る様に伝わってくる。これだ! フォーカシングの迷いや構図のストレスが一気に吹き飛ぶような味わった事のない恍惚感。実にクリアな視界である。
すぐさまアングルを低く構えるため、波打ち際のスロープに腹這いとなり再びビューファインダーを覗き込んだ。
頭の中のイメージとファインダー内の像とのギャップが埋まっていく。心配していたアイポイントの位置も迷う事なく、むしろ的確に被写体に誘導してくれたという印象であった。
波間に浮かぶ富士のイメージに近づけるため、ドームポートを半分海中に浸けた。波しぶきを顔面にうけながらも水中マスク無しでファインダーを覗けるVF45 1.2xのメリットがここで発揮される。
背後から顔を出した朝日を浴び、富士のまわりが橙色に染まった瞬間、シャッターを切った。


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波間に浮かぶ朝焼けの中の富士山
(レンズはNIKKOR 35mm f1.8)



通常ならウェットスーツを着込み、首まで海に浸かりながら撮影する様な場面。
しかし、その後の陸撮を考えるとショップのシャワーも使えない早朝のこの時間に海水で全身ずぶ濡れになるのはあまりに効率的ではない。
しかしファインダーの45°の傾きのおかげで、私は普段着のまま朝日が上りきる僅か1時間の間に1400枚もの写真を記録出来たのである。


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日の出と共に輝く大瀬崎湾内
(レンズはNIKKOR 35mm f1.8)

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ミズタマウミウシ
(レンズはMicro NIKKOR 60mm f2.8)



続いて60mmマクロレンズを装着して湾内の海中へ。 新たな視野に対する好奇心で足取りも軽い。ワクワクしながら被写体を探すと砂地から僅か5センチ程の高さのクマデコケムシの天辺に体長1センチ程のミズタマウミウシが乗っているのを発見。
VF45 1.2xの使用感を試すのにはもってこいの被写体である。 実はこのファインダーを装着して一番心配だったのがマクロレンズ使用時の小さな被写体への“当て感”であった。例え新ファインダーのクリアな視界が確保できても、ファインダー内に被写体の像を浮かび上がらせる感覚が鈍くなればシャッターチャンスを逃してしまう。
しかし、その不安は見事に裏切られた。最短にピントを合わせハウジングの底で砂地を這わす様に被写体ににじり寄って行くと、ファインダー内のど真ん中にミズタマウミウシの像が鮮明に浮かび上がった。
前日おこなったフィギュアを被写体に置き換えての簡単な室内練習による効果もあるだろうが、想定されていた範囲内の上下の誤差もすぐに慣れ、心配されていた当て感の遅れは全くない。45°のファインダーの傾きはここでも威力を発揮する。これぞVF45 1.2xの真骨頂というべきローアングルでのマクロ撮影である。マクロ撮影の大半は中層を泳ぐ魚を撮影するよりもこのような砂地や岩場、海草等の上に棲む被写体を狙う場合が多い。
その時、水底すれすれにカメラを構えるローアングルの構図をとると、どうしてもファインダーを覗きこむ姿勢に無理が生じていた。 例えば、腹這いに近い恰好で覗き込むと顎を無理に上げ呼吸が乱れてしまう。その為どうしても撮影に集中出来ずカメラを持ち上げ俯瞰でアングルを構えてしまい迫力に欠けた写真に仕上がるという失敗も多い事であろう。
ファインダーに45°の傾きがあるだけで呼吸も落ち着きどっぷり画作りに集中できる。さらにくわえたレギュがハウジングの背面に当たることがないため、違和感なくがっちりとホールド出来た。


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ミジンベニハゼのペア
(レンズはMicro NIKKOR 60mm f2.8)



続いて砂地の窪みに転がっている瓶の中に棲むミジンベニハゼを撮影。 以前ハウジングに付けていた0.66倍のピックアップファインダーでは、四隅のケラレは無いものの視野倍率が低く二匹の両目にピントを合わせる作業はある程度時間がかかっていた。 VF45 1.2xの効果はファインダー内の被写体と対峙した後にも本領を発揮。ピントのヤマが以前よりもさらに鮮明にわかるため、フォーカシングに気を取られる事もなく構図の切り取りやシャッターを切るタイミングに集中できる。


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メアジの群れ
(レンズはTOKINA 10-17mm fisheye f3.5-4.5)



この日、大瀬崎湾内には数千匹のメアジの群れがアジ玉を形成していた。
早速ワイド用のセッティングに変えて再び湾内へエントリー。
Tokina10-17mmレンズを装着している為、フォーカスダイヤルはズーム仕様。ズームはほぼ10mm側に固定して撮影するため、左手はカメラの底を持ち上げる様にホールドした。
これは私の癖であるが、この方が泳ぎながら撮影する時上腕部が疲れてくる事が無いためだ。
今回わかった事だが、この構えで撮る場合ファインダーは45°の角度がついていた方が断然ホールド感が増す。
業務用のムービーカメラのファインダーの多くに傾きのあるものが使用されているのもこうした理由からであろう。
さらに四隅のケラレが一切無いVF45 1.2xの視野の広さはワイドでも絶大である。中層を縦横無尽に泳ぎ回るメアジの群れについて行きながら構図の細部に注意を払う事が出来る。
途中表層付近へとアジ玉が浮いて行ったかと思ったら、次の瞬間、川の様に群れの形を変え一斉に海底まで移動する。
その上下移動の繰り返しの中ファインダーから目を離さずとも左目で海底からの距離を計り安全管理にも目配せ出来るのもこのファインダーの利点である。


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メアジの群れ
(レンズはTOKINA 10-17mm fisheye f3.5-4.5)



これまで標準レンズ、マクロレンズ、魚眼ズームレンズと3パターンの画角を用いてVF45 1.2xの使用感を試したが、いずれの条件においても大変満足している。
いや、むしろもはや無くてはならない必須アイテムになったと言うべきであろう。その使用法をさらに工夫すればよりポジティブな結果が得られるはずである。 この進化した新たな目を通して見えてくる海を私はとても気に入っている。






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