越智 隆治 TAKAJI OCHI
産経新聞写真報道局を経てフリーのフォトグラファー&ライターに。以降、南の島や暖かい海などを中心に、自然環境をテーマに取材を続けている。ダイビング経験本数5000本以上。また、新聞社在籍当時から、ドルフィン・スイミング、伊豆半島・富戸漁港でのイルカ追い込み漁取材などを通じて、イルカと人の関係に興味を持ち、以後、御蔵島、ハワイ、フロリダ、パラオ、バハマ、オーストラリア、マーシャル諸島など国内外の多くの海でイルカの撮影を行っている。
MDX-7D(Canon EOS 7D用ハウジング)のレビュー
MDX-7D(Canon EOS 7D用ハウジング)を使用して
今までは、MDX-PRO 5D Mark II(Canon EOS 5D Mark II用ハウジング)でワイド撮影、MDX-40D(Canon EOS 40D用ハウジング)でマクロ撮影をメインに水中撮影を行っていた。
50Dまで手を出さなかったのは、ほとんど機能が変わらなかったから。
フルサイズ1台とAPS-Cサイズが両方あると、同じレンズを使用しても撮影のバリエーションが増える。例えば、100mmマクロであればAPS-Cで160mm、15mmフィッシュアイであれば24mmと、レンズ1本で撮影対象に合わせて装着するレンズ選択ができるため、取材時のレンズ本数を減らすことができる。
7Dをすぐに購入した最大の決めては、秒間8コマのシャッターが切れること。
クジラの撮影時に、5D Mark IIでは秒間3.5コマしか切れないので、船上からブリーチングなどを狙うときに、心もとない。
今までは、水中撮影用の5D Mark IIと40Dの他に、船上撮影用に1D MarkIIIを持って行っていたけど、荷物の総重量を減らしたいと前々から思っていた。
バッテリーの種類も、5D Mark IIと40D、それに1D MarkIIIでは違っていたために、充電器と予備バッテリーがそれぞれ必要だったが、これも1セットで良くなった。
使用感に関しては、on/offスイッチの位置がまったく変わってしまったので、慣れるまでは違和感を感じたが、まあ、これも慣れれば大丈夫。撮影していて一番気になるモニターの色の出具合は、水中に関して言うと、同じ撮影モードでも40Dよりも青かぶりが少なく、同じ写真を撮影しても綺麗にモニターに映し出されるので撮影していても気分が良い。
まるで、レッドフィルターを被せているのではないかと思えるほど、思いのほか水のブルーを感じない写真が撮れたりする。青さは、少し優しい色合いで表現されるので以前のようなビビッド感は感じない。それを良いと思うか、悪いと思うかどうかは好みの違いだろう。
MDX-7Dハウジングは、光ファイバーでのストロボ撮影も可能になり、より安心感が増した。操作性に関しては、今後使い込んでいく上で、色々と気づいてくる点も出てくると思うが、初めて使用した使用感はなかなか良い。
シャッターレバーが、縦位置でも横位置でも撮影しやすい形状になっていたり、ファインダーがより見やすくなっていたりと、色々と改善されていて、今のところかなり気に入っている。
どのボタンが何なのか、のシール表示がされているのが素人っぽいと言う人もいるけど、そのハウジングだけを使用していれば、表示がなくてもいいかもしれないが、自分のように、何種類かのハウジングを使い分けて撮影している者としては、機材によってボタンの位置が違うから、シール表示があった方が安心だ。
ポートはバヨネット式で、もともと脱着がし易い。ポートカバーの位置をハウジングによっていちいち替える必要性が無い。今までのポートをそのまま全て使える。カメラの取り外しも簡単で、この辺は今までのSEA&SEAのハウジングの使い易い点を継承している。
さらに下記のサンプル撮影は、全て15mmフィッシュアイレンズを使用して「風景モード、太陽光」設定で撮影。撮影地は、フィリピンのバリカサグ島。透明度は悪く、青さも無かった。5D Mark IIや40Dだと、海の青さが不自然なくらいに青くなる場合があったが、7Dでは青さに柔らかさが出ている。
バハマでも、Canon EOS 7Dに15mmのフィッシュアイを装着して、SEA&SEA MDX-7Dハウジング+NXコンパクトドームポートのセットで撮影を行なった。
通常は、Canon EOS 5D Mark IIに15mmフィッシュアイレンズ+MDX-PRO 5D Mark II+NXコンパクトドームポートのセットで撮影することが多いが、写真にバリエーションを付けたい時に、上記のセットで撮影したりしていた。
5D Mark IIのフルサイズに15mmフィッシュアイを装着したのに比べて、APS-Cの7Dに同じレンズを装着すると、画角は24mm相当になる。当然の事ながら、15mmで撮影するよりも、離れている被写体をより大きく撮影することができる。
それでいて、16-35mmなどのショートスームレンズをフルサイズに装着して撮影するよりも、7D+15mmの方が背景が丸みを帯びているので、個人的には好みだ。
バハマでは、イルカの個体識別の撮影も行なっている。その場合にもこのセットは有効。写真のように識別しやすく、真横からの写真を撮るときにも効力を発揮してくれる。
このタイセイヨウマダライルカは、まだ生後1年くらいの赤ちゃんで、しかも身体に何の傷もマークも無いので、個体識別するのは困難。
イルカとダイバーを撮影するのにも、7Dと15mmのセットでの撮影は有効な場合がある。多くのスキンダイバーがイルカと上手に泳ぐ瞬間、極力近くで、しかも他のダイバーが中途半端に写り込まないように撮影するのは、難しい。
5D Mark IIに15mmの場合、画角が広過ぎて、中途半端に他のイルカのテールやダイバーの顔だけ、フィンだけとかが写り込んでしまうことは良くある。トリミングすればいいという発想もあるけど、できればノートリミングで納めたい。
とにかく、確実にダイバーとイルカを奇麗に納める目的で海に入る時には、迷わずに7Dと15mm+SEA&SEA MDX-7Dのセットを選択している。
上記したように、邪魔な物が中途半端に写り込みにくい。より迫力のある寄りの写真が撮影できる。
こちらも素潜りでの撮影なので、極力被写体に詰め寄ることで生じる無理な動きが少なくなり、体力の消耗を避けれるなどのメリットがある。
写真は、手前のダイバーとイルカはいいのだけど、バックにいるダイバーが、こういう入り方の場合には、さすがにトリミングもできないのが悲しいというサンプル写真。
イルカの撮影のとき、画角の狭くなる7D+15mm+SEA&SEA MDX-7Dのセットを使うことで、求めるものは、被写体となるイルカをより大きく撮影した迫力のある写真の撮影。
透明度が高くて、砂に砂紋ができている場合などには、フルサイズにフィッシュアイで背景を入れての撮影がいいのだけど、透明度が低い場合や、背景があまり奇麗でない場合は、背景よりも、イルカをメインに撮影する方が多い。
その場合にも、7D+15mm+SEA&SEA MDX-7Dのセットで撮影を行なった。
コンパクトドームポートを使用するのは、スキューバダイビングと違って、スキンダイビングの場合、少しでも素早く潜行して撮影体勢に入りたいので、浮力の少ないコンパクトドームポートを使用した方が潜り易いからだ。
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